35年間、独学で磨いた唯一無二の焼き鳥
JR原宿駅から徒歩10分ほど、明治通りから一本入ると「原宿 鳥久」と書かれた味のある提灯と赤いのれんが出迎えます。店内はコの字の白木のカウンターのみで、14、5人も入れば満席となる造りながら、雰囲気を感じさせます。焼き台に立ち、大中小の大きさの違う3種の団扇で、備長炭を扇ぐ大将の真剣な眼差しは一見頑固そのもの。しかし、実はやさしい人柄で、「どのお客さんにも美味しいと言ってもらいたい」と語る笑顔が印象的でした。
「師匠がいないから一生修業です」と語る大将が供する串物は、焼き鳥の固定観念を覆す味わい。千葉から取り寄せた地鶏は、余分な水分を飛ばし、臭みを抜くなど、しっかり手仕事を加えます。また、「さび焼き」「ねぎ間」「砂肝」など、品ごとに焼きと味加減を絶妙に変えて調理します。一本ずつ、お客さんの食べるスピードに合わせ、一番美味しい瞬間を届けてくれます。
営業中に店を切り盛りするのは、大将と娘さん。仕込みは息子さんも加わり、家族で鳥久の味をつくっています。常連さんが多く、アットホームながらも「常連さんだから優先するんじゃなくて、お客さん一人ひとりを大切にしています。カウンターといいながら究極の相席ですから」と大将。
焼き鳥の味わいを引き立てるお酒は、「魔王」、「森伊蔵」などのプレミア焼酎が人気。ロックグラスに並々と注がれ満足度も十分。ほかにウイスキーは「山崎12年」、誉れ高い各種の地酒、ワイン(赤・白、共にグラス、ボトル)、お祝い用にシャンパンも。鳥久でしか味わうことができない焼き鳥をぜひ一度ご賞味あれ。
メニューは「おまかせ」(税抜4000円~)が基本。焼き物が8串のコースで「さび焼き」「血肝(レバー)」「つくね」「ねぎ間」「砂肝」の5本が最初に提供され、日替わりのおすすめが2本、季節の野菜焼き1本の構成。苦手な部位の変更や、好みがあればリクエストも可能。写真は持ち上げているのが「ねぎ間」、お皿は左から「手羽先」、「砂肝」
左かららタレの奥深い旨味を堪能できる「つくね」「血肝(レバー)」と、レアな焼き加減がたまらない「さび焼き」。ワインとの相性も素晴らしい
「突き出し」は日替わりで三品。この日は「ポテトサラダ」「ぬか漬け」「大根おろし」。いずれも自家製で、特に「ポテトサラダ」はレアな人気メニュー。新玉ねぎの風味が効いた、つまみになる味わい。「そら豆」のような、季節ならではの一品を楽しみに通う常連も少なくない
手に持つ団扇は大中小の大きさがあり、ピンポイントで炭の火力を調整する。大将は真剣に焼き台に向かいながら常にお客さんの動きも見ており、食の進み具合に合わせて提供する。客の好み、飲み物に合わせて味を調整し、また同日に2回目の同じ注文があれば、焼き加減を変えるなど、細かな気配りも行う
大将曰く「究極の相席」というカウンター。男性客だけでなく、女性同士のお客さんも多い。店内には大将が学生時代に森口忠造理事長と、高橋長太郎学長から頂いた色紙を近々掲示する予定とか。なお、専大の校友と言うと大将から「建学の精神」を尋ねられるのでご準備を
菅克昭さん(昭57・経営) 有限会社 原宿 鳥久 代表取締役社長
「原宿 鳥久」は知る人ぞ知る焼き鳥の名店。「大将」と親しまれる菅克昭さんは、大学卒業後にアパレル会社へ就職。5年間勤めた後、食の分野に興味を持ち、客として通っていた「鳥久」で修業を開始。しかし3カ月後に先代店主が体調を崩し、急遽店を受け継いだ。ほぼ未経験ながら独自に研究を重ねること35年、今ではその腕に惚れ込んで通う常連も多い。予約制で「お客さんに満足してもらえる料理の提供」を大切にしている。学生時代はボクシング部に所属し先日は「原田周大選手パリオリンピック壮行会」に参加した。
【原宿 鳥久】
住所 | 東京都渋谷区神宮前3-27-17 T.S TWO BLDG 1F |
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TEL | 03-5474-0301 |
アクセス | JR原宿駅より徒歩9分 |
定休日 | 日、祝日 |
営業時間 | 月〜土 18:00-23:00(L.O22:30) |